まゆのゆりかご　ストーリー

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抱っこできる赤ちゃんの棺　～まゆのゆりかごがうまれるまで～デザイナー大川七恵

～出会い～

私が住吉さんと出会ったのは作品制作のために通っていたガラス工房でした。住吉さんはたまたま毎週私と同じ時間に仏具の制作活動をされており、それぞれの仕事をしながら雑談をしたり少しお仕事をお手伝いをしていました。

～赤ちゃんの棺を作る前まで～

ある日、彼女から赤ちゃんの棺についてのお話を聞き、どのような棺が使われているのか実物を見せてもらいました。
これまで工業デザインの仕事、クラフト的な仕事、吹きガラスのテーブルウェアや彫金の仕事などいろいろなことをしてきた私ですが、棺のデザイン依頼は初めてのことで正直なところあまり気にせず話を聞いていました。
見せてもらったその棺は何十年も前からあるようなデザインで、重く時代にそぐわない代物でした。
もし私が使う立場になったら使いたいか？と問われれば答えはNo！です。私に何かできることがあるかもしれない。でもこの仕事は私がやってよいかどうかと、その時は思っていました。

～作りたいと思ったきっかけ～

私には2人の息子がいます。
母親が赤ちゃんを抱っこすることは、私も赤ちゃんもこの上なく幸せと喜びで安らかな気持ちにさせてくれたことを覚えています。この子たちがお母さんに抱っこされない、そしてお母さんがこの子たちを抱っこ出来ないなんて考えるだけで同じ母親として、涙が出てしまいます。
赤ちゃんの棺を見ることで、妊娠・出産・子育て成長は当たり前の事では無いと改めて感じるきっかけでした。
このような思いがひと月、頭から離れず迷いながら「私がこれを作らなくてはいけないのかもしれない」と思うようになっていました。
赤ちゃんが優しく柔らかなかわいい棺に安らかに眠り、お母さんに抱っこされる姿が見えてきました。
家族、そして赤ちゃんが悲しみの中でも気持ちが穏やかになるお手伝いが出来るのではないかと思うようになり赤ちゃんの棺を作る決意をしました。

～まゆのゆりかごについて～

赤ちゃんはお母さんのお腹の中で子宮というカプセルで守られています。
子宮に替わる優しいベッドを用意するのはどうかと考え繭型にする事を決めました。
素材は和紙でパルプモールドなら丸い形が可能なのではないかと試作を始めました。

和紙にもいろいろな種類があって扱いやすい良い風合いの和紙を選ぶところから始め、同時に大きさや形も住吉さんと決めていきました。
型を作っては削り美しい優しい形に改良を重ねて和紙の繭が出来上がりました。
次に防水加工をする必要があります。ビニールや樹脂で防水加工するのが一番手軽なのですが火葬の時に有毒ガスが出てしまいます。かわいい我が子にそんな苦しい事は避けなくてはいけません。
何か良い素材はないか？
自然素材で柿渋なども試しましたが臭いがきつかったり色が茶色だったり他にもいろいろと試して蝋引きすると防水になる！という事にたどり着きました。
普通のパラフィンワックスは有害物質が出るようで私も作っている時に気分が悪くなってしまいました。
そこで天然蝋の中で色、硬さ、匂いが良かった大豆蝋を使う事にしました。防水加工も出来てふんわりと優しいベッドに柔らかなシルクの生地を使いたいと思いシルクを探し歩きました。素敵な生地が見つかりました。
このようにして赤ちゃんの棺が出来上がりました。

～ネーミング～

さて、名前はどうする？
これだけ赤ちゃんの事、お母さんの事を思って作り上げてきた赤ちゃんの棺、ぴったりでかわいい名前をつけてあげたい、いろんな案を出し合いました。
・繭玉
・まゆだま
・繭籠
・まゆかご
・繭のゆりかご
・繭包
・まゆづつみ
・まゆ

候補をいくつか挙げてしっくりくる名前『まゆのゆりかご』　に決まりました。

～棺のサイズについて～

この後、サイズはSSサイズから3Lサイズまで揃えました。
どんなに小さい赤ちゃんでもお腹の中に来てくれた時から我が子です。
赤ちゃんの棺を使ったことのあるママからの声の中に、赤ちゃんの身長に対して大きすぎる棺が悲しかった・・・
とききました。
サイズをたくさん作ったこともそのママの声に寄り添いました。

～デザイナーの想い～

数多くのメディアでご紹介いただき、少しずつ必要とされている方々に情報が届くようになって多くの方が使ってくださるようになりました。実際使って頂いたお客様からまゆのゆりかごに出会えて良かったという感想をいただき、作ることに迷ったけど作って良かったと思いました。
まゆのゆりかごが必要とされている方にこのような棺があることの情報が届きますように願っています。大川七恵